ホームMMPGについて研修活動 > 第123回定例研修会レポート

研修活動

21世紀型社会保障の実現に向けて ~セーフティネット機能の維持と社会経済との調和を考える~
宮島 香澄 先生(社会保障改革に関する集中検討会議 幹事委員 日本テレビ報道局 解説委員)

 宮島氏はまず、「今のままの日本が、本当に次の世代に自信を持って渡すことができる状態なのか」という疑問を投げかけた。急速に進む少子高齢化、国の財源不足といった大きな問題は、存在はしているが、国民の中でその問題意識は共有されているのだろうか。

 将来の日本は、人口の推移からも分かるように、若い世代に大きな負担が課せられることとなる。しかし、そのような現実に対して、世代間には認識のギャップが存在しており、そのバランスを早急に元に戻さなければならない。その策として宮島氏は、▼子供の数を増やしていくこと、▼経済が成長していくこと―の2点を主張した。しかし、日本の経済力は、国際的に見てもその低下が顕著であり、かつての、アジア経済の中心的位置づけも、周辺諸国に奪われている。そのような現状に対して宮島氏は、「経済力の低下は、社会保障の土台を崩すことにも繋がる」という見方を示した。

 国が進める社会保障改革の方向性については、▼次の世代を育てるために子どもを産める環境を整えること、▼国が進める医療機能の集約化において、それぞれが連携し、段階的に医療サービスが受けられる体制を構築すること、▼地域包括ケアにおいて、地域の中で支えられる高齢者が自分たちの役割を持つことの重要性―を指摘した。

 さらに、「少子化が“子どもを持ったことのない大人の増加”につながることに危機感を感じる」と述べ、人間の利己的な考え方について、「現在は目の前にいる子ども達に負担を負わせたくないという感情が働くが、将来的には、次の世代に負担を負わせることに抵抗感を感じない大人が増加するのではないか」と危機感を募らせた。

 最後に宮島氏は、「あれもほしい、これもほしいと言うことができなくなってしまった今の日本の中で、国民が賢い目線を持ち、次の世代のことを考えながら、国の政策を考えていかなければならない」と改めて主張した。

これからの社会保障制度を支える在宅医療の在り方 ~新たな地域包括ケアシステムについて~
萩原 輝久 先生(株式会社ヘルスケア経営研究所 代表)

 萩原氏は、「これからの社会保障制度を支える在宅医療の在り方」をテーマに、「在宅医療とはもう一つの高度先進医療である」という考え方を主張した。また、「治療する(キュア)から寄り添う医療(ケア)へ」という言葉を用い、医療・介護サービスの利用者側と提供者側の双方から見て、必要なサービスの在り方について説いた。

 萩原氏はデータとして、関西圏の各県における人口予測と、医療と介護の需要予測を示し、▼今後、各地域において過疎化が急速に進行していくこと、▼介護に比べ医療の方が地域間のバラつきが大きいこと―等を指摘した。さらに、今後の方向性として、在宅療養支援病院・診療所の在り方について言及。「より身近な存在として、地域密着型のコア的な役割を果たしてほしい」と述べた。

 高齢化の進行と同時に考えなければならないこととして、認知症のケアがある。萩原氏は、認知症専門外来を紹介受診した患者の診断に関するデータを示し、その中から、正常圧水頭症を例に挙げた。正常圧水頭症の患者は全国で約30万人いると言われているが、その内、診断のもと手術を受けている患者は年間1,200人余りとされている。すなわち、認知症専門外来により正常圧水頭症の診断を受けることなく手術を受けられなかった約30万人の患者については、ずっと認知症の診断のままということになる。この例から萩原氏は、「高齢者に寄り添う医療とは高度先進医療である」と改めて訴え、老年医学を広めることの重要性を指摘した。

 地域包括ケアシステムの将来像から学べることとして萩原氏は、▼住み慣れた街・居宅での暮らしには治療(キュア)ではなく、寄り添い・支える医療(ケア)が重要であり、かかりつけ医や終末期ケア、在宅医療等が役割を持つこと、▼緊急時、急性憎悪時の後ろ盾としての有床診療所の役割、▼安心して暮らせるために、住処と医療・介護サービス、特に、リハビリテーションがもっと身近になること―等を挙げ、「今あることを見直すことが重要である」と主張した。

 日本の現状を考えると、変わらないことのリスクの方が大きくなっている。しかし、「住み慣れた生活圏で支えていくことが現在求められていることであり、一歩ずつ変わっていかなければならない。尊厳を回復できる、支えられるようなサービスが求められている」と、萩原氏は訴えた。

医療機関のリスクマネジメントを考える ~大震災から得た教訓を未来に継承する~
澤田 勝寛 先生(特定医療法人慈恵会 新須磨病院 院長)

 澤田氏は、阪神淡路大震災が起こった当時の資料を提示し、「災害やリスクは、いつ、何時、降りかかるかわからない」と述べ、震災後の神戸の街の様子を生々しく語った。さらに、3月11日に起こった、東日本大震災における被害の爪痕を示しながら、被害の恐ろしさと、今回の災害に対して事前に行えなかったリスクマネジメントについて指摘した。

 リスクマネジメントの考え方には、▼リスクアセスメント(予知、予防)、▼ダメッジコントロール(リスクへの対応、被害の最小化、マニュアル、リーダーシップ)―の2つが挙げられる。澤田氏は、今回の東日本大震災においては、双方において十分にできていなかったことを指摘し、その中でも特に、情報の乱れや情報の一元化における不十分さを主張。澤田氏が院長を務める新須磨総合病院では、震災時に災害対策ニュースを発行し、院内での情報の共有と一元化を図ったことを、事例として提示した。

 一方で、1994年にアメリカで発生したノースリッジ地震、阪神淡路大震災、東日本大震災を比較。それぞれの災害時のリーダーの行動や政府の対応を示した上で、日本社会における危機意識の現状と今回の東日本大震災で、我々が失ったものを改めて示した。

 澤田氏は、危機管理において重要なこととして、▼リスクに強い組織一人の責任にしない組織であること、▼形式知であるマニュアルを暗黙知とすること、▼正しい情報を収集すること―等を指摘している。リスクを予知、予防するためには、問題を認識し、組織の中で意思を決定できるリーダーの存在が不可欠であるが、そのリーダーの指導の下、正しい情報を共有し、普段から様々な目線でものを見るということを意識することが重要である。

 澤田氏は最後に、「強くなければ生きられない 優しくなければ生きる資格がない」というレイモンド・チャンドラーの言葉を提示し、組織のリーダーとして、常に強くありたいという、震災を経験した者として危機に向かい合うリーダーの姿を示した。

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